かきしま海道からとびしま海道

かきしま海道からとびしま海道

[はじめに]

YMCCのクラブ行事として,しまなみ海道,松山から夕やけこやけ海道,四万十川,高知への,5泊6日のサイクリングが計画されました.私は1泊2日までしか走った事が無いので,連日走るとどうなるのか心配でした.そこで,予行演習と称して3泊4日のツアーを計画し,F本さんと走ってみました.

コースは,広島空港に飛び,フェリーで江田島に渡り,かきしま海道を走って呉まで.そこからさざなみ海道の一部を経由で,とびしま海道を縦走して,最後はフェリーで竹原港に渡り,広島空港から帰京します.距離的には,健脚の方なら2日で充分ですが,それを高齢者ペースで4日かけて走ることにしました.

[Day-1:5月28日]

かきしま海道 江田島=瀬戸内海で4番目に大きい島
羽田から広島空港,広島港から江田島. 走行 江田島の島内

コース概要  Relive   https://www.relive.cc/view/1601398605
走行=44.5Km 獲得標高登り= 623m (いずれもStravaによる.以下同じ)

羽田から飛行機で広島空港まで飛び,そこからバスで広島駅路面電車で広島港(宇品)に向かいます.荷物置き場もあり,自転車2台を,あまり人迷惑にならずに置けました.路面電車はのどかにゴトゴトと街を南下して行きます.

広島港には立派な路面電車のターミナルがあります.屋根も有り広々としており,気兼ねなく自転車を組み立てました.ところが空気入れのフロアポンプが有ると言うので借りたら,仏式バルブにぴったり嵌らず,逆に空気が抜けてしまい,結局ハンドポンプで入れ直しの羽目に.かなり時間をロスして,お昼を食べる時間がなくなってしまいました.広島駅の新幹線口から南口まで延々と駅を横断して,のんびりした路面電車での移動を考えると,広島駅で自転車を組んで自走で港に行く方が良かったかと反省です.

サイクルーズパスを入手して切符を買い,立派なフェリーに乗り込み,江田島に向かいます.
すると,何と目の前を潜水艦が横切って行くではありませんか.走っている潜水艦を見るのは初めてで,海上自衛隊の主要基地の近くだと実感します.結局,江田島の切串港に着いても昼食の場所もコンビニも無く,そのまま走り始めます.事前に調べた食堂は閉店しており,その他には全く店も無い海岸を走り,旧海軍兵学校の近くまで来て始めてコンビニ発見.店の前の自転車スタンドは江田島市のマーク入り.このコンビニで栄養と飲料補給します.

旧海軍兵学校の見学ツアーは,残念ながら時間切れで入れません.先を急ぐことにします.

辺りの海には多くの筏が組まれて,かきしま海道の名前の由来である牡蠣の養殖が盛んです.道に牡蠣の殻が落ちていることがあるので注意,と地図に書かれていました.踏めばパンクどころかタイヤが切れるかもしれませんので,よく見ながら走りますが,大体は車に踏まれて細かくなっているので大丈夫そうです.

沖美町美能の港から宿までは結構な山坂があり,疲れも出てきた所で,鹿田公園なる丘の頂上越えでかなりの登り,進みも遅くなります.
何とか宿に到着,部屋に自転車を2台持ち込みます.ゆっくり大浴場に入り,夕食に行きます.食事中も,裏側から見る宮島の上に広がる壮大な夕焼けを楽しんで,一日目,走了.

[Day-2:5月29日]

かきしま海道 走行 江田島-呉  瀬戸内海で4番目に大きい島
途中; 平清盛ゆかりの「音戸の瀬戸」,  日本一短い航路「音戸の渡し船」片道3分
かきしま海道・呉まで  https://www.relive.cc/view/1602913788 42Km  398m

二日目の朝,この立派なリゾートホテルに,宿泊客は我々二人のみ,と発見.二人だけの朝食に地場の小魚のあげものが大サービスで出され,超満腹となりました.いくら平日とは言っても経営は大丈夫かと心配になります.お天気も怪しいので早々に出発します.

ここは,本来は造船所だと思いますが,今作っているのは船か,浮き桟橋か,一体何でしょう? 造船不況の時は歩道橋とか橋梁とかで大手造船会社は凌いだようですが,この辺でも製品が多様化しているのでしょうか.

やっと見えて来ました,早瀬大橋,江田島から倉橋島へと渡ります.急坂を登って橋にたどり着きますが,橋の左の側道は工事のため通行止め.仕方ないので反対に横断して,右の側道を行きます.

はるか下に船が見えます.

渡り終えて下から見上げると,大きな高い橋です.橋のたもとまで登るのが急坂な訳だと納得.

音戸への最短距離は島の西側を北上するのですが,車が多く危険だと聞くので東岸を進みます.この日は時折雨が降り,アップダウンの続く道を,ついつい先を急いで走ってしまいます.

やがて音戸大橋,第二音戸大橋の二つの橋が頭上に見えます.この橋はやはり危険なので,お勧めされた音戸の渡しを渡ります.ダイヤは無く,船が居なくても対岸から姿を見て来てくれる,のどかな渡しです.

小さな桟橋で船を待つと,高速船が速度を落として海峡を通過して行きます.その姿に見とれていたらば,突然桟橋が大揺れで,一瞬自転車が落ちるのではないかと冷やりとしました.通過する船の作る波が桟橋を大きく揺らしたのです.その後は注意しましたが,小さな漁船でも高速で駆け抜けると桟橋は大揺れになります.

渡し船が来ました.船頭が一人のワンマンで,接岸したら,もやい綱も掛けずにエンジンで岸に船を押し付けて,その間に人や自転車は渡ります.揺れるとやや怖いです.

音戸を渡れば呉までは地続き,山越えも無いし,と思ったのが,後にあさはかだったと身に浸みます.
まずは,しばし走り,海上自衛隊の拠点を遠望します.さすがに軍港です.潜水艦と護衛艦の大群は,太平洋でアメリカを除けば最強の海軍と言われる一端が垣間見えます.この艦隊の向こうにはヘリ空母も停泊しています.

珍しいカタマラン(双胴船)の軍艦を発見.音響測定艦「ひびき」級2隻の一つです.電動機推進で自身の騒音を極度に抑えながら,1800mのケーブルの先に,2.6Kmもの曳航アレイソナーを低速で引き,潜水艦を発見する船です.

ここから後は楽勝と思ったら,呉は良港,つまり岸のすぐ近くで海が深い港なのです.つまりは山が海に迫り平地の無い地形,だから少し進むにも急坂を登って下る繰り返し,呉市内のすぐ近くでこんな苦労するとは思わなかった.
登れば眼下にドックが見えます.

ともかくホテルに直行.アーリーチェックインが出来て,濡れた服を着替えられたのはラッキーでした.

到着後,大和ミュージアムに行くつもりでしたが,不覚にも火曜日は呉市の公的な施設は定休日でお休み.それに連れて主な商店街等も定休日の店が多くてシャッターストリート.

昼飯に行こうと呉の名物をホテルで聞いて外出しますが,広島焼きの店も,冷麺の店も有名店は定休日なので,仕方なく足に任せて探します.すると,大アーケードから横道30Mに営業中の店発見.広島焼きも冷麺もあるではないか! 呉焼きと称する牡蠣の乗った広島焼きと,呉冷麺を注文し,ビールで乾杯です.店内には訪れた有名人の写真やサインもあります.昨日に続いての昼抜きに終わらなくて良かった.

夜は夜で,駅から一分の「瀬戸内バル 五十六」で,酒と肴を楽しみます.ここは,一階はワインを揃えた酒屋で,二階がバルになっており,かなり混むこともあるようですが,早い時間だったのですぐに入れました.薦められた日本酒と肴をじっくりと楽しんで,二日目終了.

[Day-3:5月30日]

走行 さざなみ海道から とびしま海道 呉-下蒲刈島-上蒲刈島-豊島-大崎下島
とびしま海道 https://www.relive.cc/view/1605150823  44.5Km 623m

昨日は定休日で行けなかった「大和ミュージアム」と,口コミではそれ以上の評判の「鉄のクジラ」に,朝一番で直行します.
公式名称 「海上自衛隊呉資料館」,通称鉄のくじら館は,真っ黒な潜水艦が空にそびえて威容を見せる無料の展示館です.潜水艦とはこんなに大きなものなのか,との第一印象です.普段は水の中に大部分が隠れていますが,全部空中に出ていると,圧倒されます.なにせ実物,本物の強さです.魚雷をどうやって船に積み込むか,電池はいまだに鉛酸電池でリチウムは予算の関係かまだ配備されていない,とか,色々な疑問に説明員の方が解説してくれて勉強になりました.聞けば自衛隊のOBの方々とか,詳しいわけです.

艦内では,潜望鏡から実際に外の景色を見ることができますが,視点が高いので実際の潜水状態での視界とは違い,はるかに広く見下ろすことができます.操舵席にも座れます.

次は大和ミュージアムです.大型の模型が中央に位置します.学校から団体で来ている子供達が大勢です.

面白かったのはこのリスト.知った名前が色々あります.

博物館の前には,呉の沖で謎の爆沈をした戦艦陸奥の巨大なスクリューやアンカーが展示されています.

見学後,呉を発って,一路さざなみ海道を走り,とびしま海道に向かいます.途中は延々と国道を走ります.坂もありますが,まだ元気です.

ようやくとびしま海道の入口の橋,安芸灘大橋が見えて来ました.

渡って振り返るとやはり大きな橋です.

すぐに次の蒲刈大橋に向かいます.上蒲刈島の南岸を東に行き,レストラン花美月で昼食.この辺は店も全く無く,こことすぐ近くのうどん屋の二軒だけがぽつんと存在しています.店内は常連さんらしい人も含めて賑わっていました.高台にある店なので眺めは素晴らしいですが,つまりは坂をそれだけ登ったわけです.

次の豊島大橋に行くのに,その手前の長いトンネルを自転車で通れるのか,怖いところか悩みましたが,もう坂に疲れていたのでトンネルにチャレンジ.結果は広い側道が有り,心配無用でした.トンネルを抜ければすぐに橋です.

豊島に渡り,そのまま通過して次の豊浜大橋も渡り,大崎下島に入ります.島を縦断して宿に到着.窓の下には小さな入り江ですが,小型船が通れるように太鼓橋になっています.宿は,食堂がメインで予約すれば泊まれる,との店で,店は食事に来る人達が居ますが,宿泊客は我々の他には一人だけでした.なお,写真のマルサン百貨は閉鎖されています.

宿の窓からは明日行く岡村島に渡る橋が遠望できます.追加で注文した大きなヒラメ一匹まるごとの刺身を二人で平らげて満足.まあ,安いだけのことはあって,階段にはムカデがでますし,風呂は自分で湯を張って入り,自分で落としましたが,閉店中のCOOPの代わりに,近くの店で仕入れた地場の酒とサヨリの乾き物で本日の反省会です.サヨリは大変旨く,もっと買ってお土産にすれば良かった,と言いつつ,安眠して本日走了.

[Day-4:5月31日]

走行 岡村島一周 小長港からフェリーで大崎上島に渡り,縦断.フェリーで竹原港に渡り,広島空港へ.
https://www.relive.cc/view/1607339318  45.5Km 520m including move by Ferry

朝食後は早々に出発します.
少し走って,近くの「御手洗の町並み」に行きます.江戸時代に風待ち,潮待ちで栄えた御手洗は,重要伝統的建造物群に指定され,古い町並みが保存,あるいは復元されています.

これは置屋だったようですが,雰囲気は集会所みたいです.内部は鉄骨で補強されているようです.

お向いの醸造所です.現役で稼働中と見えます.

見学を終えて,本題のとびしま海道に戻ります.

平羅島,中ノ島の二つの小島経由で,三つの橋を越えると岡村島,愛媛県です.

見返すと,海の対岸に昨夜泊まった辺りが見えます.

岡村島を半時計周りで一周することにすると,半周で岡村港に出ます.今治方面からフェリーが着く港ですが,大きくはありません.

途中にはロバらしき家畜も居ました. 島には多くのみかん畑があり,あちこちでみかん箱が乗る程度の小さなトロッコ用レールが岡の上の畑と海岸の道路を結んでいました.

一日数本しかない大崎下島の小長港と大崎上島の明石港を結ぶフェリーに遅れては大変と,早めに乗り場に帰ることにして,再び橋を渡ります.

フェリー乗り場の小長港は,橋が完成して広島から岡村島まで陸続きになるまでは,重要な港として栄えたようですが,今は「ゆたか海の駅とびしま館」も実質開店休業状態で,レストランも休業でした.

フェリー乗り場の二階には,「ネロリの島café」との,しゃれたカフェがあります.海に面して開放的で気持ちの良い空間で,レモンのスムージーを頂きました.本棚には色々な,他では見ないような教養を感じさせる本が並び,かんきつ類のエッセンスを抽出したオイルなどを販売しており,その抽出方法の講習会も主催しています.この日は教室の生徒さんが一人だけで,実質,個人レッスンをしていました.

フェリーに乗り込み,とびしま海道を離れます.

先ほど渡った橋の下を船で通過します.

大崎上島のほぼ南端に位置する明石港に上陸し,次の目的は,大崎上島の北端にある垂水港の近くの「ファームスズキ」で,牡蠣と車海老のランチです.

そこに行くには,島を西に横断し,北に縦断です.フェリーを降りるとすぐに登りの開始,覚悟の島横断ルート,山越えを延々と登ります.ここで連続四日の疲れが足を引っ張ります.ギアがどんどん落ちる,まだ落ちる.ペースは上がらない.暑い,コンビニも無い.

やがてトンネル発見.やれやれこれで頂上,後は下り,と一安心しますが,現実はそんなに甘くは無かった.

トンネルを越えて下ったところで突き当たりを右折,島の縦断に入ります,が,またまた登り,延々と登り.予想していなかった登りに,いつまで続く不安になります.でも登らなければ昼飯も無い,帰宅も出来ない.ただひたすらこぎ続ける.

やっと頂上です.下り,快調です.本当は途中で右折して広域農道に入る予定が,ここでブレーキなんか掛けられるか,の気分でガンガン下って海まで出てしまいました.

結果的にはこれが正解で,距離は多少長くなりましたがアップダウンは終わり,以後ほぼ平坦で目的地まで行けました.中国本土,広島県の竹原港に向かう垂水港のフェリー乗り場を確認してから昼食に向かいます.

これで実質走了,打ち上げとなる昼食は,元塩田だった養殖池の牡蠣と車海老です.春は池の水を抜き,数ヶ月間,底の土を耕し,井戸の地下から汲み上げた海水で養殖した牡蠣と車海老です.

これがその塩田跡の養殖池.一周走ってみますが,広い.

ここからフェリーまでは押し歩きと覚悟を決めて,ビールで乾杯.完走を祝います.

フェリーまで押し歩きで到着,輪行パッキングを始めてしばらくで,突然の豪雨の襲来.建屋内に避難します.走っているか歩いている時に遭遇すれば,一瞬でびしょ濡れになる鉛筆のような雨にも,実質降られずにやり過ごし,フェリーに乗り込む時には止んでいました.

この辺のフェリーは見事に左右,と言うか前後対称です.どちらが前でしょう?

竹原港が見えてきました.上陸すれば家までは地続きです.自転車でも帰れる,とは言いませんが.

竹原港でリムジンバスと言われるミニバンの乗り合いタクシーに乗り,30分で広島空港.無事帰宅しました.

[終わりに]

計画時はかなりゆったりペースで楽に組んだつもりが,三日目,四日目となると疲労が蓄積してきて,普段なら前アウターで気にしない坂でも,坂と見るとすぐインナーに落とす羽目に陥りました.やはり歳は争えない.その代わり,美味しいものを色々食べ,かきしま海道ととびしま海道を制覇し,3泊4日の長旅という新しい世界が経験できました.感謝!

参考資料:呉市発行 安芸灘とびしま海道サイクリングマップ 第5版より引用

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COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 2 )
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  1. いやあ、羨ましい旅程ですね。
    特に鉄のクジラと車海老ランチが良さげでした。
    私も時間を見つけていってみたいと思います。

  2. posted by 村上 健(むらかみ つよし)

    よこはまみなとサイクリングクラブさんのホームページをしばらく見ていませんでしたが変わっていました。

    レポートを見るととびしま海道の文字。

    私の田舎、正確に言うと私は横浜生まれの横浜育ちで祖父母が住んでいた島がとびしま海道終点の岡村島の隣の小大下島。

    よくぞ行っていただきました。

    私自身自転車のオフ会を含めしまなみ海道は三回程、とびしま海道は二回程自転車で走っています。
    毎年何回かは行きますが、昨年は車で1回、飛行機利用で3回、今年三月には車でしまなみ海道経由で今治からフェリーで。
    帰途は岡村島からとびしま海道経由で山陽道、名神、東名で帰ります。

    岡村島にロバがいたのは地域おこし協力隊を終えて、岡村島へ定住した成田さんとう言う方が農業の傍ら飼っています。

    日本全国過疎化が進んでいますが、岡村島の隣、小大下島は石灰岩の採掘で栄えピーク時500人以上の方が居たという事です。

    是非多くの方にしまなみ海道と共にとびしま海道を自転車で走って頂きたいと思っております。

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