報告者 ヨコハマミナトサイクリングクラブ 大湖 茂
当日の行程を追体験する『relive(I浦さんご提供)』をご参照ください
https://www.relive.cc/view/1797865210
[1章 プロローグ]
この日の天候は、すこし遠くに積乱雲の浮かぶ晴天。気温暑く高湿度、これぞ日本の夏といえる朝となりました。出発地は、つくばエクスプレス線「みどりの」駅です。郊外駅の広いロータリーに、8名が列車輪行により集合しました。使用機種はランドナー2機、20吋小径車1機、700Cロード5機と多様です。全機が駅柵に沿って駐輪すると、クラブラン集合にふさわしい佇まいとなりました。
みどりの駅前で集合
今夏はなんだか慣れてしまったかのような猛暑日ですけれど、自分が担当するクラブランでは身が引き締まる緊張感です。当初行程を短縮し、休憩する回数と時間を多くしよう。発汗による脱水症に気を付けようと思いました。
[2章 走行技術]
谷田川に沿って進み、しばらく岸辺の未舗装路を行きます。
停車してトラブル対応の講習会
わたしの企画は、舗装されていない地道の区間を積極的に取り入れます。その理由は、轍(わだち)のついた、タイヤの滑りやすく潜りやすい道を行くときの走行技術を磨きたいから。地道の走法は、繊細かつ微妙な状況での舗装路の操縦に応用できるからです。たとえば、降り続く雨水の張った路面を走行するとき。また避けることのできない水たまり、泥水の乗った場所や砂のかぶった場所を突っ切るときなど安定して走ることができます。
未舗装の地道では、腰を浮かせ気味にして前後輪の荷重を平均します。
腕と脚は弾力的に伸縮させ、路面からの突き上げを吸収し安定を保ちます。
両手はハンドルをしっかりと保持しつつ、予定する進行方向が乱れないよう左右を繊細に修正します。
両脚は、踏み込む力と抜く力との合成です。それは力強く後方へ蹴りだす駆動力を得ること。また粘着するような、丁寧な駆動力を使い分けることです。
たとえば、砂利道や泥道に直進性を保つときの力強い走法に。そして溝状に掘られた轍の上部から底面へ降りるときの慎重な走法にと使います。このようなとき、わたしは軽めのギヤを選んでいます。
視線は進行方向のすこし先を意識するのがよいと思います。困難な路面では、つい手前に視線が行きがちですけれど、ほんとうの困難な路面はその先にあることが多いです。
山と川の間を走る日本の田舎道
谷田川の岸辺の地道は、しばらく先で生い茂る夏草に隠れてしまいました。仕方なく岸から離れ、整然と区画された水田と水田の境界線をなぞるように進みます。両岸の景色は、見渡す限り稲作の農業地帯となりました。
広がる田園
稲の生育は順調かと見受けます。刈り入れまであと少し、美味しい新米の季節が待たれます。わたしたちの食を支えてくださるコメ生産農家の方々に感謝です。
この日の先導は案内役のわたし。後続はH大サイクリングのOBとしてゲスト参加してくださったT辺さんにお願いしました。
見通しのきかない幅員の狭い場所では、自動車と遭遇したとき、わたしが「前から車!」と声を発します。T辺さんは、即座に後方へ向け大きな声で復唱してくれます。振り返ると、みなさんが路肩寄りに整列して走行しているのが見えます。
T辺さんのランドナーのフロントバッグには、行動地域の地図が挟んでありました。現在地と進行する方向を確認することは基本です。卒業して長くなりましたけれど、学生サイクリストOBはよく訓練されていて、とても頼もしく思いました。
稲作地帯の農道は、往来が少なく走りやすい
後方からの微風が背を押してくれますけれど、道巾が狭いので巡航速度は時速20キロ弱に抑えました。わたしはこれくらいの緩い速度でも、700C車輪で行くときは、ケイデンス(クランク軸の毎分回転数)を80回転程度にするギヤを選びます。その理由は、クランク回転数を高回転気味にして走るのが好きだから。たとえ低速度であってもです。
この状態が続くとじつに楽しいです、身体中に快感物質がめぐるような歓びを感じます。自転車は低速で走行しても充分に楽しめます。
集落を通過すると生活感が戻ります
[3章 休憩]
谷田川から牛久沼に至り、沼畔を西方に回り込みますと、西谷田川の流域に進入します。この川を遡るようにして進み、県道210号線の細見橋を渡りました。
橋を渡った川向うの地区では、多くの自動車と並走する県道210号線を行きます。小貝川と交わる手前で住宅街へ進路を変え、ほどなく牛久沼の南端に出ました。
木陰で休憩
水辺の公園には小さなあずまやが建っています。参加者から助言がありまして、その日陰に肩を寄せ合うようにして涼を求めました。
時刻は昼近く、大休止のあずまやで青空を見上げると…、まあ本日はこれくらいかなあ、暑いものね。汗も噴きだしてシャツがびしょびしょだ。冷たい飲み物で身体の中から冷却したら気持ちよいだろうなあ、と心より思いましたっけ。
この地点から国道6号線、すこし先で旧道を使い、JR牛久駅付近で軽く昼食をとることにしました。「軽く」というのは、次に訪問する「牛久シャトー」が、この日の本番だからです。
当館でたっぷり飲るための準備体操として、駅前ロードサイドのファミレスに入店します。待ちきれないわたしはここで生ジョッキを飲みましたよ。
[4章 シャトー]
食事と休養を済ませ、汗が引きますと、参加者は態勢を整え、線路を横切って約600m北東に所在する牛久シャトーへと移動しました。
ビールを飲んだ参加者は、これより徒歩で先発隊を追います。自転車を降りて曳き、喋りながら行くのも風情があるものです
牛久シャトーは、日本で最初の本格的なワイン醸造所と呼ばれます。現在はクラフトビールなども扱い、多様な燃料補給ができます。
シャトー入口にて
巨大なワイン樽 二階は博物館
レストラン入口
わたしたちは庭園を見渡す、ゆったりした雰囲気の館内レストランに席を取りました。冷水をチェイサーにして、地ビール、スパークリングワインなど、生ハムを肴に心ゆくまで堪能しました。
すっかりよい気分になり、クラブラン参加者は、午後遅くに牛久シャトーから自転車を曳いて歩きだしました。
自転車に乗らず、徒歩の行列となって駅に向かうわたしたち。歩道で行き交う歩行者のみなさんが興味深そうに眺めています。自転車は歩いても楽しいです。
『飲酒したら自転車を運転しない』、サイクリストの鉄則です。
自転車の運転は、車道の左側を走行し、交通信号を守り、歩行者を最優先する。
わたしたちクラブサイクリストが走行の模範となれば、交通安全を推進する一助となるでしょう。
見上げるほどの作品は日時計でした
当地の画家「小川宇銭」の河童も座ります
JR牛久駅前で自転車を分解し、各人は列車輪行にて帰宅します。
牛久駅前にて輪行準備
牛久駅ホームで列車を待ちます
常磐線にはすこし贅沢してグリーン車に乗り込みました。車両の平屋建て部は、小部屋状のコンパートメントに造られています。まるで貸切列車のような気分で、再び缶ビールにて懇談会が始まりました。
暑かったけれどよく走ったなあ…、車窓に流れる景色を眺め気分が高揚します。次回はどこへ走ろうか、何をしようかと話題は尽きず、自転車談義は盛り上がりました。
[5章 エピローグ]
さて、この日参加者のうち若干名にご感想を頂戴しております。この場をお借りしてご紹介いたします。(順不動)
【I浦さん】酷暑の中,最後のビールまでたどり着けたのは幸いでした.多種類のビールはそれぞれ主張があって楽しい味わいでした.
【F本さん】とにかく暑かったですね。ビール美味しくいただけて結構でした。
帰りの列車から変な雲の塊が見えて気になりました。今朝のニュースでは、ジブリアニメの「天空の城ラピュタ」みたいな、積乱雲の頂上部が広がって平らになった「かなとこ雲」として話題になっていました。
【T本さん】家族からは猛暑の中のサイクリングを呆れられましたが、2年ぶりの皆さんとの月例ラン、お蔭さまで楽しく走ることができました。
【M野さん】ライド経験の少ない私ではありますが、昨日は格段に暑いライドでした。いや〜 、あんなに汗が止まらないのは久しぶりでした。
【ゲスト参加T辺さん】私は今日のような少しひなびた所が好きです。距離が短いこともあり、最後まで走ることができましたが、輪行帰路の牛久駅構内で回りの景色が白く見えたのは熱中症だったのかもしれません。
【N地さん(当日お休み)】ビールの写真が入ってなかったのは、行けなかった組への配慮でしょうか。笑
以上、みなさんお疲れさまでした! 当日の走行約30km
Relive作成: I浦さん
写真提供:I浦さん、T辺さん、大湖
【お願い】『飲酒して自転車を運転すれば罰せられます』
飲酒したら、自転車を降りて歩行者になりましょう。自転車を曳いて歩けば、サイクリストも歩行者です。ただし酔って転倒したり怪我をしないでくださいね。また他の歩行者にぶつけたり、車に轢かれて事故の当事者にならないようお願いします。(この項、神奈川県警 交通相談センターに確認済みです)
LEAVE A REPLY